トレーサビリティ

1. 農薬の毒性2. 化学物質過敏症 3. 農薬の被害4. 農薬の一日許容摂取量(ADI)
5. 残留農薬基準6. ポジティブリスト制度7. 農薬のドリフト(飛散)対策
8. 現状の農薬散布の問題点(耐性菌・耐性虫)9. 環境への負荷(生物多様性の破壊、土壌消毒)
10.団粒構造の破壊

4. 農薬の一日許容摂取量(ADI)

農薬の使用に関して規制され、私たちにとって身近な農作物や環境への農薬の残留性も規制されています。その残留農薬の基準となるのが、農薬の摂取上限値であるADI(Acceptable Daily Intake:一日許容摂取量)です。ADIの決め方は、動物実験で毎日農薬入りの餌を与え、解剖等により発がん性、3世代にわたる繁殖への影響、催奇形性、遺伝毒性など様々な検証が行われ、影響の出ない量を求められます。その結果、問題のない量を無毒性量(NOAEL)とし、それを安全係数として1/100したものを、人が農薬を一生にわたって、毎日摂取しても健康に影響の恐れのない体重1Kgあたりの上限値、一日許容摂取量(ADI)として算出されます。基本的にADIは、FAO(国連食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)、合同食品規格委員会(CODEX)で決められます。このADIを元に、各国で残留農薬基準が決められますが、日本では厚生労働省によって策定されます。

5. 残留農薬基準

基本的に残留農薬の摂取基準値は、農作物から摂取される農薬以外に、肉や魚介類、水や空気などの環境からの影響を考慮して、ADIの80%を超えない値が設定されます。その過程は、FAO(国連食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)、合同食品規格委員会(CODEX)等によって、実際に農薬を使用して農作物を栽培し、農薬の残留量を分析して基準値を設定します。この基準値の農薬が、食品に残留したと仮定し、国民栄養調査などを元に国民平均、幼小児、妊婦、高齢者の4つのグループごとに、1日に摂取しうる農薬の量を算出します。その数値をグループごとにADIと照らし合わせ80%を超えない場合は、これが残留基準値に設定されます。しかし、4つのグループのうち1つでも、ADIに対して80%を超える場合は、農産物の可食部(皮など食べない部分を除去)の残留農薬、調理加工後の残留農薬など、生活に近い状況によって1日に摂取しうる農薬の量を算出します。これでADIを超えない場合はその値を採用し、超える場合は基準値の最も低い値が採用されます。このような段階を経て、農作物それぞれに残留農薬の摂取基準が設定されます。平成15年から平成17年の東京都のデータのため、改正前の食品衛生法で規制されている83種の農薬に限られますが、以下の食品から基準値以下とはいえ、残留農薬が検出されたようです。

産 地 種 類 品 名
国内産 野 菜 キャベツ、キュウリ、しそ、チンゲン菜、トマト、にら、
白菜、パセリ、馬鈴薯、ピーマン、ほうれん草、水菜、レタス
果 物 伊予柑、梨、ブドウ、メロン、リンゴ
外国産 野 菜 アボガド、インゲン、枝豆、オクラ、かぼちゃ、きぬさや、
スナックエンドウ、セロリ、レモン
果 物 イチゴ、オレンジ、柿、クランベリー、グレープ、グレープフルーツ、
スウィーティ、チェリー、バナナ、ポンカン、マンゴー、メロン、ライチ

ちなみに平成14年厚生労働省発表の、農産物の残留農薬の検査結果による統計は以下の通りです。

農産物の残留農薬検査の統計結果

検査数 910,989件
検査対象農薬数 320農薬
農薬検出数 総 計 3,282件 (0.36%)
国産品 868件 (0.44%)
輸入品 2,414件 (0.34%)
基準値を
超えた数
総 計 110件 (0.03%)
国産品 27件 (0.02%)
輸入品 83件 (0.03%)
 

畜産物の残留農薬検査の統計結果

検査数 3,321件
検査対象農薬数 33農薬
農薬検出数 総 計 22件 (0.66%)
国産品 13件 (0.48%)
輸入品 9件 (1.44%)
基準値を
超えた数
総 計 0件 (0.00%)
国産品 0件 (0.00%)
輸入品 0件 (0.00%)

残留農薬検査法に関する問題点の中で、大きな問題点の1つは、残留している農薬が検出されないまま農産物が市場へ出回ることや、実際より低い値で検出されてしまうことではないでしょうか。新規登録農薬が年々増加しており、全体の農薬数が多いため、検査する農薬数も多くなってしまい、精密性も疑わしくなってきてしまいます。なぜ新しい農薬がどんどんつくられ、登録されてしまうのでしょうか? 新規登録農薬の増加は、一般消費者が農作物に求める品位と価格の安さが背景にあります。安くて形の綺麗な農作物をつくるためには、手間をかけずに管理ができ虫の被害もない野菜を作るために、農薬の散布が必要になってきます。このような消費者側からの要望に対応するため、改良に改良を重ねた農薬が新規登録され、総数が増加してきました。しかし消費者の中から農作物に綺麗さや価格の安さだけを求めずに、安全性について考えはじめる人々も出てきています。

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