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・ 未来農業研究会社長講演「出現する未来」&「フランスの有機(バイオダイナ・・・・

アグリシステム未来農業研究会講演

「出現する未来(5年後の日本)」&「フランスの有機(バイオダイナミック)農業の視察報告」

アグリシステム社長 伊藤英信

 

あいさつ

 

今日は皆さんといっしょに未来農業について考えて行きたいと思います。

 


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TPPは500年に一度の津波と同じような影響を及ぼす可能性があります。TPPに国の財政問題がからむと現体制が崩壊する可能性があります。我々はTPPに対応した農業の仕組み、販売方法を考えて行かなければならないと思います。アグリシステムは「U理論」にもとづいて改革を進めていますが、この手法を簡単に説明すると次のようになります。

 

・他人の目で現状をよく観察する。

・過去の経験を捨てる。

・信念にもとづいて、深いところから事業を展開する。

・それを形にしていく。

アグリシステムはこのようなやり方で変革して行きたいと考えています。具体的には次のような取り組みを始めています。

・土作りから始めて、農産物の高品質化に取り組む。つまり、美味しい商品が流通する仕組みを作る。

・製粉事業では生産者に近い位置にいるという利点を活かした新しいビジネスモデルをすでに作り上げた。今後は、ここに一つのブランドを確立して行く。

5年後を見すえて、有機食品を開発して行く。

・人口の大都市への一極集中を見すえて、農業と医療と教育の複合施設「バイオダイナミック・ヴィレッジ」を作る。

 

「出現する未来(5年後の日本)」

 

U理論に「出現する未来から考える」という手法がありますが、私が考える5年後に出現する未来は次のようなものです。

 

・団塊の世代が70歳を超え、農家の担い手が高齢化し、日本農業の崩壊が始まる。

TPPで増額した補助金の負担が限界をむかえ、補助金の削減が始まる。

・農家戸数がさらに減少し、十勝では5,000戸を割り、平均耕作面積は50ha程度となる。

・医療費が50兆円を超える。社会保障費が重くのしかかり、国家財政が破綻寸前となる。

・日本が経常赤字に転落する。

・親と子供がガンになる確率が50%となる。

・一生のうちにアレルギー、アトピー、化学物質過敏症になる確率が50%となる。

・ミニスーパー、自然食コンビニ、農産物直売所が増加する。

・パン屋、和菓子屋の数が20%減少する。

・地方では限界集落(人口の50%以上が65歳以上の集落)が増加する。

・大手が有機市場に参入し、市場規模は3倍になる。

 

「農業の大転換」

 

日本の農業が、今後も生き残って行くためには「大転換」が必要です。具体的には以下のようなことです。

 

・営農コストを50%削減し、低コスト高品質をめざす。

・エバーアミノ、耕盤液を使った土作りを行う。

EMで畜舎を醗酵させる。醗酵態厩肥を作って畑に薄くまく。

・化学肥料の使用をやめる。

・高品質作物をつくる。

・オーガニック(高収入作物)を作って、6次産業化する。

 オーガニック或いは特栽の作物を作ることによって、6次産業化のハードルは低くなります。

・農業機械を半分にする。

 

ヨーロッパでもそうですが、農家は昔から6次産業化を進めてきました。みそ、しょう油、漬物、チーズ等の乳製品、ジャム、パン、麺類(稲庭うどん等)、菓子、料理、家具(仏壇等)は農家で作られてきました。

 

「フランスの有機(バイオダイナミック)農業の視察報告」

 

下はバイオダイナミックの堆肥の写真です。ヨーロッパではバイオダイナミックのワインは有機のワイン以上に高い評価を得ています。

 


BD堆肥.JPG

 

 

 

 

 

 

 

下はバイオダイナミックのワイン農家の販売所です。バイオダイナミック農法で作られたワインを販売しています。ここのワインは日本にも輸出しているそうです。よく知られたロマネコンティはバイオダイナミックのワインです。

  

BDワイン販売所.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下の古い建物では山羊と牛を飼い、バイオダイナミックのチーズを作っています。

 

 

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 羊小屋.JPG

 

 

 

 

 

 

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下の写真の後方の家は16世紀の建物です。現在も使用されています。世代ごとに大金をかけて家を建てる日本とはずいぶん違うと思いました。

 

 


16世紀の家.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下の写真は18世紀の建物です。今も研修生の宿舎として利用されています。

 


18世紀の家.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下はバイオダイナミックの農家に到着したばかりのパン焼き窯です。薪で全粒粉のパンを焼くそうです。

 


BD農家のパン窯.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BD農家のパン窯②.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下はバーゼル(人口17万人)郊外のバイオダイナミクス関連の自然食品店です。

 

 

バーゼル郊外の自然食品店.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下はコルマール(人口6万人)の大型スーパーのBio(有機)コーナーです。地方都市のスーパーにBioの専門コーナーがあります。

 


コルマール大型スーパーBIOコーナー.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BioのPB商品もありました。

 

 


コルマール大型スーパーBIOコーナーPB商品.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下は人口300人程の村にあるクリスティーヌ・フェルベールの店です。ここのジャムは伊勢丹で販売されています。

 

 


クリスティーヌ・フェルベール.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下は人口1,300人の町リクヴィルのマルシェ(市場)Bioパンの店を出している農家です。

 

 


リクヴィルのマルシェ農家のBIOパン.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下は人口6万人のコルマールにあるパン屋です。窓から石窯が見えるようになっています。

 


コルマールのパン店.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

コルマールのパン店の窯.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランスではバイオダイナミック農家が500軒くらいあってそのうちの半分がワイン農家だそうです。

バイオダイナミックの評価は高まっていますが、フランスの社会では無理やり雇用を作り出している状況であり、富裕層と貧困層にわかれ、社会保障で国家財政が圧迫されています。

グローバル社会ではどこも同じ問題を抱えていると思いました。