農薬

1. 農薬の毒性2. 化学物質過敏症 3. 農薬の被害4. 農薬の一日許容摂取量(ADI)
5. 残留農薬基準6. ポジティブリスト制度7. 農薬のドリフト(飛散)対策
8. 現状の農薬散布の問題点(耐性菌・耐性虫)9. 環境への負荷(生物多様性の破壊、土壌消毒)
10.団粒構造の破壊

イギリスから輸入されて製剤化されていた除草剤パラコートは、1999年までは製造ライセンスを得て国内生産されていましたが、毒性が強く、自殺や他殺事件を数多く引き起こして問題になったことのある農薬でもあります。このように、一部の農薬はヒトに対して毒性を持つため、農業従事者に対する健康被害、あるいは農作物への残留農薬がしばしば問題となってきました。このため、今日では農薬の使用について、法律できびしく制限が加えられています。

1. 農薬の毒性

農薬の毒性について、その影響作用に応じて以下のように分類することができます。

急性毒性 農薬の摂取直後に有害な作用が現れ、急死することもあります。
慢性毒性 急性毒性を示さない程度の量の薬剤を、一生涯に渡り摂取させ続け、一定量蓄積したときに
現れます。
発ガン性 ガンを引き起こします。DNAに作用してガンを誘発するほか、生体内でつくられる農薬代謝
物がガンをつくることもあります。慢性毒性のひとつです。
遺伝毒性 農薬を摂取したときに、遺伝子にまで作用してその子孫に異常が現れます。
催奇形性 農薬の影響を受けた場合に、胎児や生まれた子供に骨格奇形や内臓奇形などとして現れます。

以上は一例であり、他にも色々な毒性があります。

もうひとつの分類方法に有効成分による分類があります。
農薬の中毒症状は、全体的に神経系統の障害が見られるようです。

分類 中毒症状 主な農薬











全身怠感、脱力感、頭痛、頭重感、めまい、
嘔気、嘔吐
エンドリン、
クロルベンジレート、
ケルセン、ベンゾエピン、
BHC、DDT


不安、興奮、部分的な筋けいれん、
知覚異常(舌、口唇、顔面)

意識消失、てんかん様の強直性および
間代性のけいれん、肝・腎障害、
呼吸抑制、肺水腫







気管支ぜんそく様 キャプタン、ダイホルタン、
フサライド、PCNB、TPN



露出部(顔、眼、耳など)の
かぶれ(痒感、紅斑、発疹)


結膜炎

















怠感、違和感、頭痛、めまい、胸部圧迫感、
不安感および軽度の運動失調などの
非特異的症状、嘔気、嘔吐、唾液分泌過多、
多量の発汗、下痢、腹痛、軽い縮瞳
アセフェート、ダイアジノン、
マラソン、DDVP、MEP、
MPP、クロルピリホス、
ジメトエート、ダイアジノン、
パラチオン、フェニトロチオン、
マラチオン、EPN、
EDDP、IBP


(軽症の諸症状に加えて)縮瞳、筋線維性れん縮、
歩行困難、言語障害、視力減退、徐脈

縮瞳、意識混濁、対光反射消失、全身けいれん、
肺水腫、血圧上昇、失禁















顔面のむくみ、血尿 ジラム、マンネブ、チウラム、
ポリカーバメート、マンゼブ




咽頭痛、咳、痰



発疹、痒感


結膜炎


















症状は有機リン剤と同じですが、
有機リン剤より速く発症および回復する。
カルバリル、ピリミカーブ、
ベンチオカーブ、モリネート、
IPC、アラニカルブ、
オキサミル、カルボスルファン、
フラチオカルブ、ベンフラカルブ、
メソミル、BPMC、NAC













全身 怠感、筋れん縮、軽度の運動失調 アクリナトリン、
エトフェンプロックス、
シクロプロトリン、シハロトリン、
シフルトリン、シペルメトリン、
シラフルオフェン、テフルトリン、
トラロメトリン、ビフェントリン、
フェンバレレート、
フルシトリネート、
フルバリネート、ペルメトリン


興奮、手足の振せん、唾液分泌過多

間代性けいれん、呼吸困難、失禁






咽頭痛、胸骨後部痛、胃痛、頭痛、めまい 2,4-D、MCPA、MCPP、
MCPBエチル

意識混濁、筋線維性れん縮、失禁、項部強直、
ケルニッヒ症候、けいれん、体温上昇、
脈拍増加、血圧低下、肝・腎機能障害





皮膚障害、眼・鼻・咽頭・気管の灼熱感










S
O
D





S
O
D










1

嘔吐、不快感、下痢、
局所刺激からくる粘膜の炎症、
びらんによる口腔・咽頭・食道・胃などの痛み、
ショック、意識障害
ジクワット、パラコート








2

3

肝・腎機能障害、乏尿、黄疸








3

10

咳嗽、喀痰、呼吸困難、肺水(浮)腫、
間質性肺炎、肺線維症
(ジクワットでは肺線維症の報告はない)
         
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