「麦の風工房の夢~小麦を主食とする新たな食文化の創造につなげる~」

アグリシステム株式会社 代表取締役 伊藤英信

雄大な畑がどこまでも広がる十勝。日本最大の豆の産地として知られていますが、日本最大の小麦の産地でもあります。この十勝に小麦文化が育ち、地域で生きる人々が小麦を語り合うようになれば素晴らしいことと、常々思い描いていました。その想いを実現させるため、2009年3月十勝に本格的な製粉工場「麦の風工房」を完成させました。

“小麦丸ごと”への想い

私は、日本の小麦文化は米豪輸入小麦の特性に合わせた仮の食文化だと感じています。日本ではふわふわの白いパンや白くてコシがある麺に向く精白した輸入小麦粉が主流ですが、マクロビオティックでは「精白した食べ物は健康を害する。」といわれています。精白した小麦粉は小麦の一部しか使わないため、ビタミンやミネラルなどの栄養を期待できないのです。一方、精白していない全粒粉は、食物繊維が多いふすまや栄養豊富な胚芽を含んでおり、栄養バランスに優れた食べ物であるといわれています。
「麦の風工房」では、本来の栄養を摂取できるよう、できるだけ小麦丸ごとに近い形で製粉しています。製粉方法は、石臼を用いる「石臼方式」と独自の「麦の風方式」の2種類で、どちらも加工適性を低下させる硬い外皮だけを取り除いています。ふすまを含む「麦の風工房」の小麦粉は、従来の一般的な小麦粉を使用した製品に20~30%混入すると、風味を大きく改善します。また、原料は全て北海道産ですので、小麦を丸ごと製粉していてもポストハーベストの心配がありません。

十勝で小麦文化を育て、発信したい

米が育たず小麦の産地である十勝には、小麦文化を育む土壌があるといえます。食事は命を支えるものですので、健康に寄与する全粒粉を主食として提案し、普及に全力を尽くす所存です。地域の方々によって全粒粉を使用した小麦製品が盛んに作られるようになれば、十勝の小麦文化が力強く育ってゆくでしょう。そうして、十勝の小麦文化を全国に発信できればと願っております。

農商工研一体型組織、始動

製粉事業開始に当たって、小麦農家を中心に研究機関や加工メーカーにご参加いただき「十勝・麦笑(むぎわら)の会」を設立いたしました。「生産」、「流通」、「研究」が一体となった取り組みを行う協議会です。例えば、既成概念に囚われず小麦粉デンプンのおいしさに着目したパンを追及し、製パン技術や製粉方法の研究、おいしいデンプンを含む小麦栽培技術の振興などに挑戦して参ります。お客様のニーズを反映させた小麦粉づくりを目指し、組織の発展に努めます。

確かなトレーサビリティー

アグリシステムのフィルドマンは毎日農家を訪問しています。冬は農家と契約し、春は植えつけのアドバイス、夏にはトレーサビリティーを確認しています。生産現場の実情を熟知し、農家と共に土づくりや栽培技術、品質向上に取り組んでいるからこそ、自信を持って栽培履歴付きの小麦粉をお届けできます。
フィルドマン観察日記はコチラ
※フィルドマンによる作況調査や「麦笑の会」の活動報告などをご覧いただけます。

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