アグリシステム株式会社

誰のために。何のために。 問い続けることで、パンも人も成長していく場所へ

bricolage bread & co. (東京都港区六本木)

パンの顔とその店の雰囲気はとてもよく似ている。たとえば、山奥の薪窯で焼く男のバゲットが仙人のような顔をしているとか、ふっくらと白いほっぺたの女性が焼くメロンパンがふわふわだったりするように…。

bricolage本店があるのは六本木ヒルズ。春は桜並木、冬はイルミネーションで彩られるけやき坂テラスの1階、グランドハイアットホテル東京の目の前に位置する。その立地がら、客層も、働く人も、実にバラエティに富んでいる。
外国籍の人、ベビーカーを押すファミリー、犬と散歩している人など、居住・旅行問わず多種多様な人々が次々に交差していく場所。その場所に並ぶパンも、訪れる人と同じように、エネルギッシュで多彩な表情を見せてくれる。
撮影・取材・文/外山暁子


 

ブリコラージュの起点

ブリコラージュの話を始める前に、まずはその始まりとなるL’Effervescence(レフェルヴェソンス)について語らなくてはならない。

東京港区にあるレフェルヴェソンスは「人、社会、地球の健康」を考え、人々との対話やすべての生物に対する尊厳、環境へのつながりの意識を回復させる「リジェネラティブレストラン」を掲げて活動している。

料理長である生江史伸氏は、2012年、東北の被災地を訪れた際、ホワイトソースの煮込みハンバーグを作り、それを大阪の「ル・シュクレ・クール」の岩永歩氏がつくったビーツのパンに挟んで、仮設住宅で暮らす人々にふるまった経験がある。

そこで喜ぶ人々の顔を見て、料理人とパン職人としての意義を共有した2人が、パンと料理、そして生江氏が日頃通っている「フグレントウキョウ」のコーヒーを提供する店としてオープンしたのがブリコラージュだ。

 

昭和のパン工場と、工場長のおばあちゃんのお家、をコンセプトとして作られた店内は、高い天井とパンを作る職人たちの姿が見える大きなガラス窓、ダイニングスペースの壁は漆喰に、ベーカリーのモルタル壁は石をぶつけて作られた意匠が施されていて、不揃いの古家具や古道具が…。多様な文化、歴史、伝統、時代が交差する場所でありながら、すべてがバランスよく成り立っているのは、その基となる思いの部分が共通しているからだろう。

「おいしいものが人を幸せにする」

「食べ物を分かち合う時間が人を笑顔にする」

「そのことが人生をより豊かに彩ってくれる」

そう考え、信じるスタッフたちが作るパンと料理、その空間。それがブリコラージュの何よりの魅力となっている。

 

 

「おいしいものを作りたい」子どもの頃からの夢を持ち続けて

店長であり、パン製造責任者の河本将(こうもとしょう)さん。主にパンの仕込みを担当し、焼くのは共に店を切り盛りする古林充理さん。パン作りからスタッフのことまで、店のマネジメントを行う。

河本さんの子どものころの夢は「パティシエになること」。小さい頃からお菓子作りが好きで、自分でパウンドケーキを焼くような子どもだった。「自分より小さな人においしいものを作ってあげたい」と思ったことが、パティシエの夢への原点だ。

 

その夢はずっと持ち続けていて、最初はパティシエとして働いていました。その後、縁あって和食の道へ。それはそれで充実していたけれど、お菓子はハレの日のもの、懐石は特別な日のものだなと思った時に、注目していた人がレフェルヴェソンスの生江さんでした。新店を立ち上げるにあたり、ベーカリースタッフや料理人、バリスタなど全ての職種の募集をしていたんです。生江さんから”パンやってみない?”と言われたのがきっかけです」と河本さん。

 

やってみると、お菓子作りにはなかった”発酵”の奥深さにすぐに夢中になった。ブリコラージュのパンは、基本的に前日に全て仕込みをし、1日低温で寝かし翌日に焼くスタイル。『パンは作るものじゃなく、育てるもの』という、岩永氏の教えがしっくりきた。

 

パンなら、世界中の人、それも小さい子どもからお年寄りまで、男女問わず誰もが楽しめるもので、日常にあるもの。でも、だからこそ、常にブラッシュアップしていく必要があるとは思っています」とも話してくれた。

焼きを担当する古林さんとは、良いところも悪いところも含めて信頼関係を築き、共に「おいしいもの」を届けるためにできることは何かを常に対話を重ねている。それはパンだけにとどまらず、スタッフたちの教育についても同じこと。

 

店長の河本将さん。気さくな人柄にやんちゃな笑顔が見え隠れする。

 

パンに合わせて、人も心地よく働くために

ベーカリーと言えば、長い労働時間がよく知られている。パンは仕込みから焼くまで、発酵という過程を取ることで多くの時間を必要とする。それならば、パンに合わせて人の働き方も、心地の良いものに変えていきたい。

会社の方針もあり、ブリコラージュのスタッフは、6時に出社し、7時のオープンに向けて準備を進める。前日に仕込んでおいたパンを焼き、また翌日のパンを仕込み、閉店となる19時を迎え、店の片付けをして帰宅する。「普通の会社員と変わらない生活をしてますよ」と笑う河本さん。現在は50名程度のスタッフのうち、製造担当は10名。シフトを組みながら、働く人の負荷がないように環境を整えている。

 

「朝に食べたいクロワッサンやパン・オ・ショコラから始まり、バゲット類、サンドイッチなど、焼き上がり順に店に並んでいきます」。

店内で食べることも可能。店内席と心地よい風が吹くテラス席は、合わせて60席ほど。サンドイッチの注文もできる。

 

十勝の畑と出会って。「景色を削り取りたくない」から全粒粉

ブリコラージュのパンは、100%国産小麦を使って作られる。小麦粉だけでなく、パンやカフェの素材となる農産物や果物なども、全国の生産者と直接やり取りし、毎年のように様々な生産者のもとを訪れている。顔が見える関係性を築き、そうして作られたものを使いたいと考えてのことだ。

 

千葉県の今村製粉(通称イマフン)さんの小麦畑には毎年訪ねていく。もちろん、十勝の小麦畑にもアグリシステムが案内し訪れたことがある。

広大さに圧倒されましたね。景色を削り取りたくない、という思いがあり、アグリシステムさんの全粒粉を使っています」。

 

初めて十勝を訪れたのは2021年。写真右から2番目が河本さん。右端が生産者の斎藤一成さん。

生産者の思いを、僕だけでなく働くスタッフも聞くことで、パン作りにも、接客にも気持ちが乗るんですよね。情報だけでなく、実際に見てきた”自分の言葉”で、実感を持ってお客様に伝えられますし」。

特に小麦は、野菜と違い畑から直接とってすぐに食べられるものではない。脱穀、乾燥、製粉を経て初めて小麦粉となり、さらに酵母や食材の力を借りて、初めてパンとして食べられるものになる。畑から遠く離れる過程の中で、それでも、その始まりを”知る”ことで意識は変わる。

 

安心で安全なものがあたりまえに食べられる世界になってほしいと思っていて。土を良くするってどういうことか?環境を考えた農業とはどういうものか? 自分の仕事は、何のためにやるのか?誰のためにやるのか? 度々立ち止まってみんなで考えるようにしていますね」。

パンもスタッフも、共に育っていくための問い。「人と人とのつながりが大切」と河本さんは言う。

 

人と人がやさしくつながり合う世界を目指して

ブリコラージュでは、クリスマスやバレンタインなど、定期的にチャリティープロジェクトを行っている。その売り上げの使い道についても、スタッフ全員でその都度話し合って決める。社会や環境に与えるインパクトについても取り組む会社として、アグリシステムと共感する部分は多い。

チャリティーイベントで登場したブリコとブリオの人形パン。昨年ブリヤンも加わった。

焼きたてのパンたちが並ぶその中で、多様な人が出会い、また別れ、交差する一瞬の時間を豊かに彩る場所。フランス語でDIYを意味する「ブリコラージュ」は、まさにその名前の通り、多くの人の手によって、創造性に満ちた存在感を放ち続けている。

 

bricolage bread &co

〒106-0032 東京都港区六本木6丁目15-1 けやき坂テラス 1F

営業情報はHPから

https://bricolagebread.com/

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